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名古屋地方裁判所 平成10年(わ)1678号・平10年(わ)1943号

主文

被告人城田彰を懲役一年及び罰金二、八〇〇万円に、被告人城田綾子を懲役一年一〇か月に、被告会社株式会社マルキヤティープロセスを罰金二、四〇〇万円に各処する。

被告人城田彰について、罰金を完納することができないときは金一〇万円を一日に換算した期間、同被告人を労役場に留置する。

この裁判確定の日から、被告人城田彰に対し三年間その懲役刑の執行を、被告人城田綾子に対し四年間その刑の執行を、それぞれ猶予する。

理由

(犯罪事実)

第一  被告人城田彰は、愛知県岡崎市井田西四番地五サンシティ井田西二〇一号に居住し、同市大樹寺一丁目五番地一四において、「マルキヤ」の屋号で健康茶の製造販売業を営むもの、被告人城田綾子は、「マルキヤ」の経理等の業務に従事するとともに被告人城田彰から依頼を受けて同被告人の所得税の申告手続に関与したもの、中川敬德は、税理士として、被告人城田彰及び同城田綾子から依頼を受けて被告人城田彰の所得税の申告手続に関与したものであるが、被告人両名は、中川と共謀の上、被告人城田彰の所得税を免れようと考え、架空の仕入を計上するなどの方法により所得を秘匿した上、

一  被告人城田彰の平成六年分の実際の総所得金額が一億八、三五一万六、七六四円であり、これに対する所得税額が八、四四六万円であるのに、平成七年三月一五日、愛知県岡崎市明大寺本町一丁目四六番地所轄岡崎税務署において、同税務署長に対し、総所得金額が四、八九七万八、一一一円で、これに対する所得税額が一、六三八万九、九〇〇円である旨の虚偽の所得税確定申告書を提出し、もって、不正の行為により、被告人城田彰の平成六年分の正規の所得税額との差額六、八〇七万〇、一〇〇円を免れた。

二  被告人城田彰の平成七年分の実際の総所得金額が二億六、九〇四万三、六九九円であり、これに対する所得税額が一億二、七一六万一、五〇〇円であるのに、平成八年三月一五日、前記所轄岡崎税務署において、同税務署長に対し、総所得金額が一億三、九三四万六、二一七円で、これに対する所得税額が六、二三一万三、〇〇〇円である旨の虚偽の所得税確定申告書を提出し、もって、不正の行為により、被告人城田彰の平成七年分の正規の所得税額との差額六、四八四万八、五〇〇円を免れた。

第二  被告会社株式会社マルキヤティープロセスは、愛知県岡崎市大樹寺一丁目六番地一に本店を置き、茶葉、穀物類の加工及び販売等を目的とする資本金一、〇〇〇万円の株式会社であり、被告人城田綾子は、被告会社の取締役として、同会社の経理等の業務全般を統括しているものであるが、被告人城田綾子は、被告会社の業務に関し、法人税を免れようと考え、売上単価を減額訂正するなどの方法により所得を秘匿した上、平成八年六月一日から平成九年五月三一日までの事業年度における被告会社の実際の総所得金額が四億一、五六九万九、七八五円であり、これに対する法人税額が一億五、五一二万四、三〇〇円であるのに、同年七月三一日、前記所轄岡崎税務署において、同税務署長に対し、総所得金額が一億一、九一一万五、三七三円で、これに対する法人税額が四、三九〇万五、三〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書を提出し、もって、不正の行為により、被告会社の右事業年度の正規の法人税額との差額一億一、一二一万九、〇〇〇円を免れた。

(証拠)

(括弧内の甲乙の番号は証拠等関係カードにおける検察官請求証拠の番号を示す。)

全部の事実について

一  被告人城田彰及び同城田綾子の各公判供述

第一の一及び二の事実について

一  被告人城田彰の検察官調書(乙2、3の二通)

一  被告人城田綾子の検察官調書(乙5、6、8ないし10の五通)

一  大西正己(甲48、49の二通)、大橋博(甲50)、松本利夫(甲51)及び岡田茂(甲64)の各検察官調書

一  松本貞子(号52)、城田すみゑ(甲53)、平和仁(甲54、55の二通)、坂田保弘(甲56)、安田桂子(甲57)、近藤千代和(甲58、59の二通)、新川千惠子(甲60)、天野義和(甲61)、高橋吉昭(甲62)、青山キヌ子(甲63)、横山訓之(甲65ないし67の三通)、島内忠治(甲68、69の二通)、殿岡進一(甲70)、新美勝人(甲71)、石黒清次(甲72)、川上敏興(甲73)及び宮岡利治(甲74)の各大蔵事務官調書

一  検察事務官作成の捜査報告書(甲6)

一  大蔵事務官作成の査察官調査書(甲14ないし44の三一通)

第一の一の事実について

一  岡崎税務署長作成の証明書(甲1、3、9の三通)

一  大蔵事務官作成の脱税額計算書(甲7)、査察官報告書(甲45)

第一の二の事実について

一  被告人城田綾子の検察官調書(乙7)

一  岡崎税務署長作成の証明書(甲2、4、5、10の二通)

一  大蔵事務官作成の脱税額計算書(甲8)、査察官報告書(甲46)

第二の事実について

一  被告人城田綾子の検察官調書(乙12ないし15の四通)

一  大西正己(甲86)及び中川敬德(甲87)の各検察官調書

一  石黒清次(甲88)、安田桂子(甲89)、鈴木隆人(甲90)、神岡政夫(甲91)、近藤千代和(甲92)、佐原宏(甲93)、城田彰(甲94)及び杉山旭(甲95)の大蔵事務官調書

一  岡崎税務署長作成の証明書(甲75)

一  大蔵事務官作成の査察官調査書(甲77ないし84の八通)及び脱税額計算書(甲85)

(法令の適用)

罰条

被告人彰及び同綾子の両名の第一の一の行為

平成七年法律第九一号による改正前の刑法六〇条、被告人綾子につきさらに同法六五条、平成一〇年法律第二四号による改正前の所得税法二三八条一項、(情状により被告人彰につきなお同条二項)

被告人彰及び同綾子の両名の第一の二の行為

右改正後の刑法六〇条、被告人綾子につきさらに同法六五条、同改正前の所得税法二三八条一項、(情状により被告人彰につきなお同条二項)

被告人綾子及び被告会社の第二の行為

平成一〇年法律第二四号による改正前の法人税法一五九条一項、被告人会社につきさらに同法一六四条一項(なお情状により被告人会社につき同法一五九条二項)

刑種の選択 被告人彰につき 各懲役刑及び罰金刑の併科

被告人綾子につき 各懲役刑

併合罪加重(被告人両名) 刑法四五条前段

被告人彰につき懲役に関し 刑法四七条本文、一〇条

(犯情の重い第一の二の罪の刑に加重)

罰金に関し 刑法四八条二項(合算額の範囲内)

被告人綾子につき 刑法四七条本文、一〇条

(犯情の重い第二の罪の刑に加重)

労役場留置(被告人彰につき) 刑法一八条

刑の執行猶予(被告人両名) 刑法二五条一項(被告人彰につき懲役刑のみ)

(量刑の理由)

本件は、(一)「マルキヤ」の名称で健康茶の製造販売業を営んでいた被告人彰及び同被告人の妻で、「マルキヤ」の経理等を担当していた被告人綾子が、本件当時の顧問税理士中川と共謀し、しかも、架空の仕入れや架空の経費を計上するなど不正の行為により、所得を過少申告し、平成六年分及び平成七年分の二年度分にわたり、所得税合計約一億三、二九一万八六〇〇円を免れたという所得税法違反事件、(二)また、右事業のため設立した被告会社の取締役で経理等の事務を統括していた被告人綾子が発行済の納品書等の単価を書き換えて売上高を圧縮し、取引先に頼んで仕入れ原料の単価を書換えさせて期末商品棚卸高を圧縮するなど不正の行為により、所得を過少申告し、平成八年六月から平成九年五月までの事業年度における法人税一億一、一二一万九、〇〇〇円を免れたという法人税違反事件の事案である。

(一)は、「十六茶」なる商品の注文が急増することになり、これに対応するための工場、機械設備の投資に必要な資金を手もとに残したいと考えての犯行で、また、(二)は、税理士から同事業年度の法人税額が約二億円になると聞き、予想していた税額をはるかに超え、法人税の納付時期が原料の買掛金の決済時期と重なり資金不足となり、金融機関から融資を受けず、手持ち資金で納付できる額にしたいと考えての犯行であって、いずれも身勝手に納税を免れようとしたもので動機に酌むべき事情があるとはいえない。

被告人両名は、(一)につき共犯者中川の示唆を受けたというものの、脱税工作を依頼し、合計一、五〇〇万円の報酬を支払っており、殊に、被告人綾子は、(一)の架空仕入れ等の領収書を調達したりし、さらに、(二)の犯行に及び、売上高を圧縮するため納品書等の単価を自ら書き換えるなど脱税工作をしており、本件各犯行態様が悪質である上、被告人綾子の関与度は大きい。

その結果、脱税額は、(一)及び(二)ともに高額であり、ほ脱率も所得税の平成六年度分が約八〇パーセント、同七年度分が約五〇パーセント、法人税分が約七一パーセントであって比較的高い。この犯罪は、誠実な納税者の税負担に関する不公平感を醸成させ、我が国の租税制度の基本である申告納税制度を揺るがすもので、社会的な非難が大きく、被告人両名及び被告人会社の刑事責任は重い。

しかしながら、本件に関する所得税及び法人税の本税を納付しており、今後の本件に関連する重加算税などにつき誠実に納付すると述べていること、被告人両名は、事の重大性を認識し、納税につき理解を深めており、被告会社とともにそれぞれ贖罪寄附の趣旨で、財団法人法律扶助協会に対し合計三〇〇万円を寄附するなどして本件につき反省の態度を示していること、今後このような脱税とならないように被告会社などの会計処理体制を改めていること、被告人両名ともに前科、前歴がないことなど被告人両名、被告人会社のために酌むべき事情も認められる。

以上の諸事情を勘案すると、被告人彰に対し懲役刑の執行を猶予する主文の懲役及び罰金の、また、被告人綾子に対し刑の執行を猶予する主文の懲役の、また、被告人会社に対し主文の罰金の各量刑が相当であると判断する。(求刑・被告人彰につき懲役一年及び罰金三、〇〇〇万円、被告人綾子につき懲役二年、被告人会社につき罰金二、五〇〇万円)

(検察官酒井治幸、被告人両名及び被告人会社の私選弁護人武田喜治{主任}、敷田稔、中條忠直 各出席)

(裁判官 山本哲一)

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